BLOG(心に残った関係書籍や映画など)

2023-08-15 07:00:00

服部信考著「パーキンソン病の自宅療法」

服部信孝著「パーキンソン病の自宅療養」
服部信孝(はっとり のぶたか)先生
脳神経内科・内科医師。順天堂大学医学部医学部長他。
パーキンソン病研究の世界的権威。
【解説】
パーキンソン病について全般的にわかりやすく書かれた、患者様、ご家族、医療介護従事者の必携の書籍です。
 【コメント】(岩井)
 服部信孝先生に初めてお会したのは、江戸川区での講演会の時のこと。
当時の「江戸川区パーキンソン病友の会」の副会長を務められた大原正惠さんのご尽力で講演が実現できました。会場は満席で熱気にあふれ、成功裏に終わりました。
 講演内容は、パーキンソン病の研究や治療と展望を語られ、秀抜な内容でした。パーキンソン病治療にまだまだ希望はある!そう感じました。講義されている先生のお姿は威厳があり、時に情熱的で圧倒されそうなくらいでした。
 講演が終わり、会場ロビーの喫茶店で服部先生とパーキンソン病友の会の方数名と私がご一緒させていただくことになりました。テーブルを挟み私の前席に服部先生、その隣にはパーキンソン病であった当時の友の会の会長の大原二郎さん。奥様の正惠さんは用事で席を外していました。
珈琲が大原さんの前に出されると、私が気がつく前に服部先生はカップを引き寄せ「二郎さん、砂糖いれる?ミルクいれる?」と聞き、それらを入れてティースプーンで丁寧にかき回して「どうぞ」と差し出しました。服部先生は大原さんが病状で少し手が不自由なのをご存知です。服部先生は笑いながら「僕は普段こんなことはしないんだけどなぁ」と大原さんの方を見て言いました。順天堂大学の医学部長である先生が、他人に珈琲を入れることはあまりないでしょう。大原さんも満面の笑みでうなずき返していました。そのふたりを包むあたたかい空間は、医師と患者の関係を越え、絆のようなものさえ感じました。服部先生は、先程の講演の時の威厳さはなく、穏やかで優しい寄り添った眼差しで大原二郎さんを見守っていたのが印象的でした。  
それはささやかなことかもしれません。しかし、私にとっては服部信孝先生のお人柄が垣間みえた貴重な体験でした。
 ※大原ご夫妻のお名前を掲載することの了承をご本人様より頂いています。
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2023-04-17 08:00:00

河合隼雄著「ユング心理学入門」

河合隼雄著「ユング心理学入門」
河合隼雄(かわいはやお)先生
1928年6月23日−2007年7月19日
心理学者。京都大学名誉教授。元文化庁長官
【解説】
難解なユング心理学を平易な言葉で自説も交えながら解説した入門書です。ユング心理学自体は古典的な心理学になっていますが、著者の散見する鋭い洞察は今でも遜色がありません。
【コメント】(岩井)
  学生時代にこの本と出合い、物事を多面的に捉えることを学問的に知りました。それからユング心理学というより、河合隼雄先生の心理学的な考察を学びたいと多数の書籍を読み講演に足を運びました。
  やがて河合先生が文化庁長官になられ講演等の機会が減った中、私は岩波書店で50名にも満たない会議室の様なところで、先生の講義を聴く機会を得ました。 講義3日目の最終日の講義途中の休憩時間、厚かましくも、この本にサインを頂こうとスタッフに声をかけました。スタッフの方は一瞬戸惑って「こちらにどうぞ。…ここで待っていてください」と部屋の前で待つことに。部屋の中から「…(サインを)ひとり許すときりがないから、講義後に…」と河合先生の声が聞こえてきました。しかし、スタッフに促され部屋に入るとそこに河合先生がおられ、満面の笑みで「よく読み込んでくれてるな」と関西弁で語りかけてくださいました。
その本は、当時より20年前の物で表紙はボロボロで、中は線や書き込みでいっぱいでした。その本をみて先生は何かお感じになり部屋に通してくださったのかもしれません。
  恐縮しながらも、サインの他にひと言を書いていただけますか、とお願いしたら「そういうのが1番困るんだよ…」と厳しい顔で言われました。慌てて私は「失礼しました!お名前をお願いします!」と言ったのにも関わらず意に返さず、本を見返したり「うーん」とおっしゃって、暫くその一言を考えてくださっていました。長い沈黙が続く中、私が「…この本を読ませて頂いて、先生にお会いするまで20年もかかってしまいました…」とぽつりと言ったら、河合先生は私の方をぱっとみて「それだっ!」と笑顔になり、そのひと言を書いてくださいました。

    自己実現には「時」がある。河合隼雄

私の中でその言葉はとても深く心に響きました。また、突然にも関わらず、ひとりの人間にその者に合う言葉を真剣に探して頂いた河合隼雄先生の姿勢にただただ頭がさがりました。  どんなに地位が高くなっても多忙でも、ひとりの人間に真剣に向き合う姿は、いろいろな著書の中で河合隼雄先生が示された臨床姿勢となんらぶれずに変わらないことに驚きと深い学びがありました。

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